最高裁判所第二小法廷 昭和48年(オ)1226号 判決 1974年4月26日
上告人 萩秋子(仮名)
被上告人 三井啓一(仮名) 外一名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人磯田亮一郎、同西田嘉晴、同模泰吉、上告復代理人堀正視の上告理由について。
特定債権が遺贈された場合、債務者に対する通知又は債務者の承諾がなければ、受遺者は、遺贈による債権の取得を債務者に対抗することができない。そして、右債務者に対する通知は、遺贈義務者からすべきであつて、受遺者が遺贈により債権を取得したことを債務者に通知したのみでは、受遺者はこれを債務者に対抗することができないというべきである。原審の確定したところによれば、本件貸金債権の遺贈については、受遺者である上告人から債務者である被上告人らに対し本件訴状送達により通知されたというのみで、適法な債務者に対する通知又は債務者の承諾がなかつたというのであるから、上告人は遺贈によつて取得した本件貸金債権をもつて被上告人らに対抗することができないとした原審の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 吉田豊 裁判官 岡原昌男 小川信雄 大塚喜一郎)